ウクライナ情勢が煮詰まってきた。東部戦線も膠着状態が続く中で、「ウクライナの勝利」に関する複数のシナリオも取りざたされている。ウクライナ側がクリミア半島も奪回する、というシナリオは(ウクライナ支持者からみて、心情的には望ましいものの)さすがに非現実的と受け止める向きが多いが、ウクライナ側が繰り返し要求している「2月24日 以前の状態」への復帰は可能だとみられている。ところで、ラブロフ露外相が、ゼレンスキー政権は大統領がユダヤ人でもナチだと強弁するために、ヒトラーにもユダヤ人の血が流れていた、と発言して、イスラエルの反発をかっているが、これは昔からある噂らしい。手塚治虫の『アドルフに告ぐ』も、このヒトラー・ユダヤ人説を物語の中心に据えていた。ヒトラーの出自には不確かな面が多いので、この説を完全に否定することも、完全に証明することもできないのではないかと思う。それにしても、フィクションに用いるなら面白いが、重大な外交や戦争の局面で、こんな俗説を持ち出すふざけた外相のいる国を相手にまともな交渉ができるはずもない。最近よくTVにコメンテーターとして出演するフランス在住のウクライナ女性が、ロシアは力と力の関係しか理解できないと断言していたが(この人の意見もかなり心情的バイアスがかかっているので、必ずしも公平でも客観的でもないけれど)、残念ながらそれは本当のようだ。ウクライナにはぜひとも頑張って力でロシアを押し戻してもらいたい。