ヒドロキシクロロキンでおなじみのディディエ・ラウルト医師に新たな研究不正疑惑が生じた。ヒドロキシクロロキンを投与した患者について、PCR検査の仕方に細工をして、陰性者が増えるように計らったという。ニュース専門サイトのメディアパルトが、病院関係者の証言の内容として報じた。
ラウルト医師は、マルセイユの感染症医療研究所(IHUメディテラネ・アンフェクション)の所長を務めていたが、ヒドロキシクロロキンの投与により新型コロナウイルス感染症の治療に顕著な効果を得たと主張し、その信奉者と、学会内外の批判的な勢力との間の論争を引き起こしていた。最近に定年を理由に退職させられたが、本人は政治的圧力を受けた決定だとしてこれを批判していた。
今回取りざたされた疑惑は、感染症医療研究所に出資するマルセイユ大学病院などが行わせた調査から浮上した。ラウルト医師らは、ヒドロキシクロロキン投与の効果を立証する目的で、マルセイユとニースの2ヵ所で調査を実施。マルセイユにおいてヒドロキシクロロキンの投与を行い、投与していないニースにおける調査を対照群として結果を比較し、投与に治療効果があるとする結論を発表していた。しかし、マルセイユ大学による聴聞に対して複数の関係者が証言したところによると、この際に、PCR検査をマルセイユにおいては34サイクル、ニースにおいては39サイクルで行っていたという。PCR検査では、サイクル数が多いほど検査の精度が上がるため、サイクル数を加減すれば陽性者と陰性者の比率には変化が生じる。不正行為によりヒドロキシクロロキンに効果があるように見せかけた疑いがある。
マルセイユ大学病院側は、まだ調査は進行中であり、結論は下せないと説明している。ラウルト医師が率いるチームを巡っては、結核患者らに認可されていない投薬を行った疑いなども取りざたされており、新たな疑惑の浮上で改めて同医師の職業上の姿勢に対する疑念が深まった。