下院、バルニエ内閣の不信任案を採択

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下院は4日、内閣不信任案を賛成多数で可決した。バルニエ首相は5日午前中に辞表を提出する。続いてマクロン大統領は5日夜に国民向けのメッセージを公表する予定。
バルニエ首相は、社会保障会計予算法案の採択を得るため、採択強制手段である通称「49.3」を発動。これを受けて野党勢力が内閣不信任案を提出していた。不信任案には左翼連合と極右政党RNが揃って賛成票を投じ、賛成多数で採択された。内閣不信任案が採択されるのは、1958年に始まった第5共和政下では、1962年のポンピドー内閣以来でこれが初めて。バルニエ少数内閣は発足からわずか3ヵ月で退陣に追い込まれた。異例の事態だが、投票の結果は予想通りだった。
今後にどのような展開になるかは予測が難しいが、マクロン大統領は、早期に後任の首相を指名して事態の打開を図る考えとみられている。後任候補としては、大統領に近いルコルニュ軍隊相、大統領を就任時から支えてきた中道政党MODEMのバイルー党首、右派所属でタカ派のルタイヨー内相、共和党所属の大物政治家バロワン氏(トロワ市市長)、左派出身のカズヌーブ元首相、そして、実務家として、仏中銀のビルロワドガロー総裁やブルトン前欧州委委員などの名前が挙がっている。左派連合と極右RNが手を結べば内閣が瓦解するのは今回の件が明確に示したところだが、左派連合内では、主軸の左翼政党「不服従のフランス(LFI)」と、社会党や環境派など他の勢力との間で溝が広がっており、後者は、LFIから離れて、政局運営に条件付きで協力する方向に傾いているという。LFIとRNを外して中間層の間で一定の妥協が成立すれば、政局運営の展望が開ける期待もある。
審議中の予算諸法案がすべて廃案になったとすると、政府は、特別法を制定して、現行予算の適用を継続する以外の方法はなくなる。特別法の法令上の性質を巡っては、前例に乏しいことから法学上の議論もあって、どの程度の内容を定められるのかはまだ判然としていない。日刊紙ルパリジャンが、予算諸法案廃案の場合の短期的な得失についてまとめたところによると、富裕層や大手企業は、特別課税や課税強化の導入が見送られることで、最大の勝ち組となる。年金受給者も、支給額改定の制限が見送られるため、得をする。その一方で、所得税の課税最低限の物価スライドも見送られることから、非課税世帯が課税対象になるなどの課税強化が生じる。農民向けの支援措置も導入が見送られることになる。