バルニエ首相は29日付の日刊紙ルフィガロとのインタビューの中で、電力課税の引き上げを断念すると発表した。予算法案の成立に向けて、極右政党RNの要求に一部譲歩した。
政府は、電力料金が一時に比べて低下していることを踏まえて、危機時に家計等の支援を目的に決めた電力課税の特別減税を打ち切る計画だった。政府は、減税打ち切りでも、電力料金は9%低下すると強調していたが、これにはRNを含む野党勢力が反発しており、首相も譲歩した。首相は、電力料金には14%の低下が実現すると言明した。この譲歩に伴い、2025年には30億ユーロ近くの追加費用が政府に発生することになり、財政健全化の展望はさらに厳しくなる。
予算法案の国会審議では、社会保障会計予算法案の両院協議会による調停案が12月2日にも下院で採決に付されることになっており、ここでいわゆる「49.3」の発動が不可避になるとみられている。「49.3」は、政府が発動を宣言すると、当該法案が採決なしに採択されるという憲法上の手段だが、内閣不信任案が提出されてそれが可決されると、内閣は瓦解し、当該法案の採択も白紙に戻される規定になっている。社会保障会計法案については、「49.3」の発動なら、左派連合NFPが内閣不信任案を提出することを決めており、これに極右RNが相乗りすれば、不信任案は可決され、内閣は倒れることになる。バルニエ首相はインタビューの中で、予算諸法が制定されずに年を越せば、所得税課税区分の自動改定で所得税は30億ユーロを超える増税になり、さらに、警察官など公務員の採用もできなくなるなど、全国民に重大な悪影響が生じると警告し、理性ある対応を議員らに呼びかけた。首相はまた、電力課税の引き上げ断念に加えて、RNが要求する違法滞在者向けの医療援助の見直しについても前向きに応じる考えを示した。
RNは、電力課税の引き上げ断念を歓迎したが、年金支給額のインフレ並み引き上げや、医薬品還付の見直し撤回などを要求して圧力を強めており、最後まで協力を約束せず、圧力を行使する構えとみられる。