フランスの繰り上げ総選挙第一回投票で、予想通りに極右野党のRNが第一党に躍進した。ただし、単独過半数を確保す
るのは難しそう。大統領派与党と左派野党連合は、RNの単独過半数獲得を阻止すべく、決選投票での協力に向かいつつ
ある。金融市場もRNの単独過半数獲得はないと見て、安堵感を隠していない。しかし、議会で極右、大統領派、左派の
3勢力が競い合い、明確な多数派が成立しない場合、次期政府を誰が形成し、どのように運営するのか、現状では皆目予
想がつかない。もちろんベルギーやオランダのように、特定の政党が単独過半数を得られないシステムの中で、時間を
かけて多党連立与党を形成し、協議と譲歩によって政権を運営している国もあり、フランスも第三共和政と第四共和政
の時代にはそれに似た政体だったが、短命内閣が続き政局は不安定だった。こうした欠点を克服するために考案された
第五共和政において、三すくみの議会が成立しつつあるのは皮肉だ。極右阻止に向けて中道と左派が協力すること自体
は一見好ましくも思われるが、筆者は個人的には、今回の選挙でいっそ極右が単独過半数を獲得して、大統領とのコア
ビタシオンを開始し、2027年の次期大統領選挙において、極右政府の実績に対する評価を有権者が下すほうが健全だと
考える。極右政党が倫理的に全く許容できない存在なら法律で禁止すればいいが、合法の存在だと認めている限り、ど
んなに不当で愚かしく思われても、有権者の選択を尊重するのが民主主義というもので(賢者より愚者が必然的に多い
一般国民に普通選挙で判断と選択を委ねる民主主義が愚かな政治システムであることは議論の余地がない)、第一党に
なったRNが存分に手腕を発揮できる状況をむしろ積極的に整えてやるのが他の政党とその支持者らの役割だろう。