フランスでお得意の暴力的デモが頻発し、治安が悪化しているため、チャールズ3世英国王の訪仏が延期される事態となった。自国の国王を斬首して平気なフランス国民だから特に物騒だ、というわけでもあるまいが、両国は慎重を期して、延期を選択した。過去にはオーストリア皇太子が殺害されたサラエボ事件をきっかけに世界大戦が発生し、ロシア皇太子が暗殺未遂で負傷した大津事件が、ニコライ2世の日本に対する侮蔑的姿勢を招いて、日露戦争の遠因となったように、王族の扱いを決して軽視してはいけない。仮にチャー ルズ3世が襲撃されても、英仏が新たな百年戦争に突入することはありそうにないが、カリスマに欠ける王様であっても、象徴的な意味合いは軽くない。ブレグジット後の英欧関係の亀裂を修復するどころではなくなるだろうから、危ない場所には足を踏み入れてもらいたくないのはたしかだ。それにしても、21世紀の西欧で、国内の騒乱による治安悪化が原因で隣国の元首の訪問が延期されるなどという野蛮な事態が発生するとは想像もしていなかった。何人もの国家首脳が戦時下のキーウを訪問して、無事に帰国しているのに、パリは訪問さえできない危険な都市になってしまったわけだ。恐ろしい話である。こんな都市で来年に五輪大会を開催するとは正気だろうか。できれば慎重に延期してもらいたいものだ。クワバラクワバラ。