リヨン地裁は7日、農薬への暴露でがんにり患した農民の訴えを認めて、製造元の独バイエル社に対して、1万1135ユーロの賠償金の支払いを命じた。農民側と農民を支援する環境団体などは、賠償金額が低すぎると批判している。
原告の農民ポール・フランソワさん(58)は、2004年に誤ってモンサント社(後にバイエルが買収)製の除草剤ラッソ(アラクロール)を吸い込み、がんにり患した。ラッソはその3年後の2007年にフランスで禁止対象となった。フランソワさんがモンサント社を相手取って起こした訴訟は長期にわたり争われ、最高裁判決を経て、リヨン地裁で賠償金額の設定を争点とする裁判が行われた。農薬被害に関する訴訟で賠償金の支払い命令が出るのはこれが初めてで、画期的な判決ではあるが、賠償金の金額は1万ユーロあまりとごく低くなった。フランソワさんは100万ユーロ程度の賠償金を請求していたが、裁判所は、農薬による中毒は認めたものの、その後の慢性疾患については直接の関係を持たないと認定。給付済みの保険金14万ユーロを差し引いた上で、1万1135ユーロという賠償金額を決定した。
バイエル側は、今回の判決をバランスの取れた決定だと評価。すべての判決内容を履行すると発表した。フランソワさん側は控訴を検討すると発表した。原告を支持する環境保護団体は、バイエルがアラクロールをまだ第3国に輸出していると批判。例えば日本には2020年に140トンが主に米の除草用に輸出されている。バイエルはこれについて、欧州ではアラクロールをもう生産していないと回答した。