ルノーのデメオCEOは仏ルフィガロ紙とのインタビューで、自動車部門の技術革命がもたらす将来の展望について語った。以下はその概要。
問:2035年には欧州の新車販売はEVのみになる。今から13年後にルノーが提供するモデルは、今日のEVと非常に異なるものとなるか?
答:13年というのは2回分の製品サイクルに相当し、2世代先の製品ということになる。その間にバッテリーとエネルギーマネジメントに関して大きな進歩があるだろう。目標は、より速い充電と航続距離の改善だ。2035年にはEVの航続距離は内燃エンジン車の航続距離を超えるだろう。充電時間のほうはバッテリーと充電設備に左右される。充電設備の出力を上げて充電時間を短縮することは可能だが、投資負担が大きいので、適切な選択が必要になる。公共の充電設備と個人の充電設備で選択は異なるだろう。
問:未来の自動車はBEVか、それともFCVか?
答:個人向けの乗用車に燃料電池を用いることに技術的障害はないし、すでに販売されている。しかし、販売量が少なく、技術も成熟していないので、コストが高いという難点がある。それに加えて、インフラ面での障害がある。BEV用の充電設備を整備するという集団的な選択がなされた現状で、それと並行して水素補給ステーションのネットワークが整備されるとは考えにくい。しかし大型商用車などでは燃料電池の使用は有意義だ。
問:20年後か30年後には、自動車は道路を走る大型コンピュータのようなものになるか?
答:10年後には自動車会社の企業価値の半分はソフトウェア事業が占めることになる。「メガーヌ」には1億のLOCがあり、これは飛行機のLOCよりも多い。自動車にはほぼ90のコンピュータシステムが搭載されており、すでにインテリジェント製品だ。かつての電話機からスマホへの移行と同じ技術革命が自動車にも起きている。恒常的なアップデートが可能で、運転者の行動から学習し続ける自動車が登場して、購入から数年間利用するとますます使い勝手が良くなるだろう。また自動車は大きなインターネットプラットフォームとなり、その上で多くの新サービスを提供することが可能になる。
問:完全な自動運転車は可能か?
答:レベル5の完全自動運転車はユートピアだが、それを目指すことで、自動車のイノベーション全体が向上するので、良いことだ。「オーストラル」は32種類の運転支援システムを提供しており、自動運転に向けた技術革新は徐々に進んでいる。自動運転車の開発は、交通規則、アルゴリズムの倫理、少数の自動運転車とそうでない他の自動車をうまく共存させる能力などにも左右される。確実なのは、自動運転に関する技術の進歩により、自動車の安全性や快適性が大きく改善するということだ。
問:自動車価格は上昇し続けるか?
答:現在は技術的飛躍の時期であり、メーカーは大規模な投資を行っているので、価格は当然上昇する。新製品の減価償却が行われるまでは、自動車価格は上昇し続けるだろう。EVの価格については、バッテリーが特に高いが、その大部分は原料価格の高騰によるものだ。
問:未来の自動車の価値はソフトウェア大手が取得するのではないか?
答:自動車メーカーの立場には2通りがある。全てを自力でこなせると考えるメーカーがあり、ルノーのように提携を優先するメーカーがある。肝心なのは、顧客の利益に配慮しつつ、技術企業と自動車メーカーが価値を公平に分け合うことだ。
問:GAFAは自動車の製造を試みるだろうか?
答:数年前にGAFAが開発した自動車を見て、競争相手になるかも知れないと考えた。しかし、GAFAはこれまで自動車を商業販売してはいない。今後のことは分からないが、自動車産業は以前からオールドエコノミーとされ、消滅するという見方もされてきたにもかかわらず、現在も健在だ。そして、最も革新的な企業が自動車に関心を抱いている。これは、自動車が人の生活においていかに重要であるかを示しており、自動車産業が常に進歩と豊かさの共有を牽引してきたことを示している。新技術を導入する場合、自動車産業はそれをスケールメリットにより民主化する。また自動車は15年間以上にわたり安全に走る必要があるのだから、自動車産業は新技術の信頼度を高める役割も果たしている。