バイルー首相の施政方針演説:年金改革巡る労使交渉を約束

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バイルー首相は14日、国会で施政方針演説を行った。
バイルー首相は、バルニエ前内閣が内閣不信任案の採択に伴い退陣したのを受けて就任した。与党勢力が過半数を持たない状況は同じで、内閣不信任案の支持で多数派が形成されないようにするのが政局運営の前提という厳しい状況に変わりはない。そうした中で、左派勢力の一部を切り崩して、少なくとも不信任案には合流しないという約束を取り付けられるかどうかが焦点で、バイルー首相がそのためにどのような譲歩を示すかが注目されていた。
懸案となっている年金改革の取り扱いについて、バイルー首相は、労使に3ヵ月間にわたる交渉をゆだねて、見直しのための協議を進めると約束。首相は特に、聖域は設けずに、あらゆるテーマでの見直しを受け入れると述べて、年金改革反対派に譲歩した。マクロン政権下で決まった年金改革は、定年年齢を段階的に、62歳から64歳へと引き上げる旨を定めており、すでに実施が始まっているが、反対派はこの撤廃を要求している。バイルー首相は、交渉中に引き上げを中断することには応じなかったが、労使交渉を経て、バランスの取れた合意が形成されるなら、政府としてそれを採用すると約束した。具体的には、まず、会計検査院に数字を盛り込んだ診断を策定してもらい、それを踏まえて労使に協議をゆだねるとし、年金収支の不均衡を招くような合意であるなら認められないと述べた。
16日には内閣不信任投票が国会で行われる。左翼政党「不服従のフランス(LFI)」は不信任案を提出することを決めており、左派諸党のうち、環境派と共産党の一部はこれに合流することを予告した。社会党のフォール第一書記は、バイルー首相が交渉を受け入れる姿勢を示したことを評価しつつも、不満の色を隠していない。