バルニエ内閣の辞職を受けて、マクロン大統領は5日夜に国民向けのテレビ演説を放送した。大統領はこの中で、辞任する可能性を否定し、新たな首相を近日中に指名すると予告した。
大統領は、下院で内閣不信任案が可決されたことについて、「極右と極左が反共和国の戦線を組み、かつてフランスを治めていた政治勢力がそれを助けた」ためだと説明。極右政党RNと左翼政党「不服従のフランス(LFI)」、そして、社会党をはじめとして不信任案に賛成票を投じた左派勢力を、無責任であるとして明確に批判した。そのうえで、RNとLFIを中心に、自らへの辞任要求が出されていることについては、自分は国民の信託を受けて大統領になったとし、任期満了まで大統領職にとどまり、国と国民のために責任を果たすと述べて、辞任する可能性を明確に否定した。今後の政局運営については、公益の担い手となる政権を樹立するため、新首相を任命すると予告。新政権は、すべての「共和国派」を結集して、少なくとも内閣不信任案に賛成票を投じない旨の約束を取り付けたうえで、国と国民の利益を第一に考えて政局を運営すると説明した。大統領は、新政権の使命として、特別法を制定して2024年予算諸法の適用が2025年にも継続できるようにしたうえで、正規の予算諸法の成立に取り組むとした。首相の具体的な名前については明らかにしなかった。
最新の世論調査では、大統領の辞任を望むと答えた人が6割程度に達しているが、同時に、国の将来に不安を持っていると答えた人は82%とさらに多く、内外に懸念材料が多い中で、国民が政局混迷をさらなる不安材料として捉えていることをうかがわせている。その一方で、大統領の言う「共和国派」の勢力が、大統領の思惑通りに協力に応じるとは限らず、今後の成り行きが注目される。