仏の政治不安定、グリーン水素プロジェクトにも影響

投稿日: カテゴリー: エネルギー・環境レポート

9月6日付の仏レゼコー紙は、フランスにおける政局不安定がグリーン水素プロジェクトにも影響を与えていると報道した。
政府は2023年、差額決済契約(CfD)入札を通じてグリーン水素プロジェクトへの支援を行うことを発表したが、以来、実施には移されていない。当初の予定では、2023年末に初の入札を行い、1年目は150MW、3年間では1GWを対象として、期間10年のCfDを付与するはずだった。
加えて、やはり政府が予告した新水素戦略も今のところ発表されていない。戦略では、目標の設定やその実現に向けたロードマップが提示される予定だったが、その内容に批判も出されていた。戦略が今後発表されることはないとの観測もある。
マクロン大統領は今年初頭に内閣改造を行い、ここでエネルギー移行省が廃止され、エネルギーに関する責任が、レスキュール・エネルギー担当相とルメール経済相との間に分割された。これにより強いイニシアティブが取りにくくなったことに加え、予算運営が厳しい状況にあるため政府が補助金付与に消極的であることも影響している。
こうした中で、仏国内のプロジェクトに投資を予定していたグリーン水素生産事業者が、フランスでのプロジェクトを諦め、すでにCfDが導入されているオランダやスペイン、英国といった国々のプロジェクトへの投資に向かうケースが発生しているという。
なお、CRE(仏エネルギー市場規制委員会)はまもなく、国内での水素インフラ展開を支持する内容の報告書を発表する予定。仏電力大手EDFの送電子会社RTEは、最近発表した報告書の中で、水素に関し、水素貯蔵を通じた電力需給調整について、5時間超にわたる場合は、バッテリーを通じた需給調整に比べてはるかに割安であると予測した。水素プロジェクト実施の追い風となる可能性がある。一方でRTEは、水素生産コストについては、国内での生産は一部国に比べて割高であると判断、輸入のほうが有利な可能性を示唆した。ただし関係者によると、スペインとドイツの間での水素輸送網の構築により、フランスは余剰水素の販路を確保しやすくなることから、国内プロジェクトの投資回収は比較的楽であるという。