ポーランドの総選挙で、ハンガリーのオルバン政権と並ぶ欧州連合(EU)の問題児だった「法と正義」が過半数割れを来たし、2019年まで欧州理事会議長(いわゆるEU大統領)をつとめたトゥスク元首相が率いる親欧州派の政府が発足する見通しとなった。EUの意思決定や結束にとっては喜ばしいことだが、カトリック保守の傾向が強いポーランド社会のあり方やポーランド人のメンタリティーがすぐに大きく変わるわけではない。それどころか、具体的な政治改革においても、法の改正にはドゥダ大統領の承認が必要であり、同大統領が「法と正義」の出身(2015年の就任時に離党)であることを考えると、新政府が思い通りの改革を推進できるかどうかは未知数。下手をすると、発足時から早くもレームダック状態に陥って、次の大統領選挙(2025年)まで何もできない状況が続くリスクもある。ドゥダ大統領は、両親ともに大学教授であり、自らも法学博士で、政界に転身する前は大学で教鞭をとったという経歴の持ち主。かなりのインテリ大統領である。LGBTの権利運動などに全面的に反対するなど、社会的風潮の変化に対しては頑固な強硬姿勢をとっているが、合法的な選挙によって有権者が示した変革の要望には理性的に従ってもらいたいものだ。