サッカーW杯:モロッコの勝利と暴動

投稿日: カテゴリー: アライグマ編集長の日々雑感

サッカーのワールドカップでモロッコ代表が強豪ベルギー代表を2-0で下した。お見事、と感心したが、その直後に、ベルギーやオランダで暴動が発生したとのニュースを知り、暗澹たる気分になった。どういう人々がどういう動機で暴動を起こしたのか、メディアの報道は今一つ歯切れが良くないのだが、映像を見る限りでは、モロッコの国旗をまとった若者らが暴れまわった模様。つまりベルギーのサポーターが敗戦の不満を爆発させたわけではなく、モロッコのサポーターが「ざまあみやがれ」的な気分を行動で表現した、ということのようだ。ベルギーにはモロッコ人移民が多いとも聞くが、映像で見ると暴徒は若い人が多いから、あるいは、ベルギー国籍を持つ移民子孫なのかも知れない。フランスでも、よくアルジェリア人移民を親に持つフランス人の若者が、アルジェリア国旗を掲げてフランスに対する反感や憎悪を表明する。モロッコはベルギーによる植民地支配を受けたわけではないから、そこまで根深い歴史的確執はないだろうが、モロッコ人移民や移民系のベルギー人がベルギー社会に溶け込めず、差別や排除を受けているとの反発を溜め込んでいる可能性はあり、それがベルギー代表の敗北をきっかけに爆発したのだろうか。確かな情報もないままに迂闊なことは言えないが、この事態は、右派界隈では、移民の存在が招く社会問題の深刻さを改めて浮き彫りにしたものだと受け止められている。おそらく移民とその子孫に対する風当たりは、こうした事件により、いっそう厳しいものとなるだろうし、移民とその子孫の鬱屈や不満もいっそう強まるだろう。そうした悪循環を断ち切る最も単純で効果的な手段は、結局のところ移民を入れないことだ、という悲しく情けない結論に筆者は辿り着きつつある。少子高齢化する先進国は移民の受け入れを必要としているという説が根強くあるが、社会の平穏や調和はそれ以上に重要ではなかろうか。やれやれ。