「タルチュフ」著作権巡りフォレスティエ教授がコメディ・フランセーズを訴え

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国立劇場コメディ・フランセーズを相手取り、ソルボンヌ大学のジョルジュ・フォレスティエ名誉教授が著作権侵害で訴訟を起こすという異例の事態となっている。モリエールの戯曲「タルチュフ」の公演台本に関する権利を主張している。11月24日にパリ地裁第3民事法廷で初公判が行われる。
モリエールは17世紀の古典期の喜劇作家・俳優で、コメディ・フランセーズはモリエールの劇団が母体となって現在まで続いている。フォレスティエ教授は古典演劇が専門で、権威ある「プレイヤード叢書」のモリエールの巻の校訂者としても知られる。問題になっているのが、フォレスティエ教授が2021年に刊行したモリエールの「タルチュフ」の失われたバージョンの再現版。これが去る1月に、モリエール生誕400周年の記念事業の一環としてコメディ・フランセーズで上演されたが、教授はその著作権を主張して劇団側を訴えた。
「タルチュフ」は、聖職者を装った詐欺師タルチュフに寄生された家族に起こる事件を描いた喜劇。その最初のバージョンは3幕物で、1664年に国王ルイ14世の御前で上演されたが、聖職者を揶揄するその内容が当時としては過激であったこともあり、興行禁止の扱いとなった。モリエールはその5年後に、修正を加えて、今度は5幕物として「タルチュフ」の興行を許された。5幕物は今日まで残っているが、最初の3幕物は失われている。フォレスティエ教授はその3幕物のバージョンを、様々な記録や証言を根拠に、5幕物を編集する形で再構築し、欠けた部分やつなぎの部分は加筆により補った。教授は、このバージョンについて自らに著作権があると主張し、劇団を訴えた。劇団側は、「タルチュフ」に著作権は存在しないと主張して対立している。