2020年の新型コロナウイルス危機以来、新車市場の低迷が3年も続いている中で、10月17日にパリモーターショー(le Mondial de l’Auto 2022)が開幕する。パリ市のポルトドベルユサイユ見本市会場で23日まで開かれる。なお、2020年に予定されていた前回は中止されていた。
自動車部門では2021年に半導体をはじめとする部品や材料の調達難により供給が減速し、これは現在も続いているが、昨今の景気後退が半導体の全体的な需要を押し下げたために、自動車部門にとってはむしろ調達状況が改善しつつある。ただし、供給面の不安が少し解消されつつある中で、高インフレと不況懸念を背景に自動車需要の後退が改めて危惧されている。こうした危機状況を背景に、世界的にモーターショーというイベントの意義自体が疑問視されている中で、パリモーターショーは期間を従来よりも短縮し、規模も縮小して開催にこぎつけたが、独日韓の大手メーカーが参加しないなど、かつての華やかさと比べて寂しい面もある。
パリモーターショーの主要テーマの1つは電動化であり、特に中国メーカーが新型EVを大挙して出品しているのが注目される。中国製の高級EVはすでにフランス市場でも販売されており、品質が良い上に価格が米テスラ車などと比べて大幅に安いのが取り柄だと評価されている。欧州連合(EU)が2035年に内燃エンジン車の新車販売を禁止して、EVへと全面的な移行を予定しているだけに、中国メーカーはパリモーターショーを足がかりに、一挙に欧州での認知度を高めることを狙っている。中国の自動車市場の成長が鈍化し、テスラとの競争もある中で、中国メーカーは新市場を開拓する必要にも迫られており、欧州向けの輸出を増やすだけでなく、現地生産を強化するために生産拠点を設置することも計画している。電動化に注力している仏大手のルノーや仏伊大手ステランティスが中国メーカーの攻勢にどのように対抗するかが仏自動車産業の将来を左右する課題にもなる。
マクロン仏大統領はパリモーターショーの開幕に合わせて、17日付の仏レゼコー紙とのインタビューにおいて、仏国内で2030年までに年間200万台のEVを生産する体制を整えることを目標に掲げた。中間目標として、2027年までにバッテリーを国内で完全に供給できるようにし、年間100万台のEVを生産することを目指すという。大統領は、現状ではフランスで販売されるEVの8割強が輸入車であることを嘆き、フランス製EVの販売を増やすための産業戦略を進めるとした。ルノーに関しては、すでにEV拠点「ElectriCity」の設置で協力しており、ステランティスとも仏国内でのEVおよびFCVの生産拠点整備に向けた計画をタバレスCEOとともに、パリモーターショーの機会に公表すると予告した。国内のサプライヤーに対する支援も拡大する方針という。
また、供給面での支援だけでなく、需要面でも、EV購入向け支援金を現行の6000ユーロから7000ユーロへ増額し、全体の半数の世帯が利用可能にすると予告した。公共充電設備についても、現在は7万基だが、毎月3000基を増設しており、2023年半ばには10万基に達する見通しであり、2030年までに40万基を整備する予定という。
なお、大統領は、米国と中国が自国の自動車産業を支援するための国家援助を行っているように、欧州も欧州製EVを支援する優遇対策を講じる必要があると強調し、保護主義的な政策の導入を躊躇しない姿勢を示した。
レゼコー紙は、ルノーと日産の資本提携の見直しに関しても、ルノーの資本の15%を保有する国の対応を大統領に質問したが、大統領は、現在進行中の協議については発言を控えると答え、国としては、ルノー・グループ並びにアライアンスの将来に向けた戦略の強化と発展に繋がるあらゆる動きを支持するとのみ述べた。