英国:ジョンソン首相が辞意表明、EUとの関係改善に希望も

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英国のジョンソン首相は7月7日の記者会見で辞意を表明した。一連の不祥事で求心力が低下し、5日にスナク財務相とジャビド保健相が辞任した後、他の閣僚や高官も雪崩を打って辞任し(7日までに53人が辞任)、与党内の退陣圧力に抗することができなくなった。首相は当初は続投に固執し、大学時代からの盟友であるゴーブ・レベリングアップ・住宅・コミュニティー相が辞任を勧めたことに反発して、同相を6日に解任するなど、抵抗の姿勢を示していた。しかし、5日に後任の財務相に任命されたばかりのザハウィ前教育相が7日に、やはり「30年来の友として」辞任を促したことなどが首相の決断に繋がる要因になったとみられている。
首相は、与党・保守党が後継の党首(後任の首相)を決めるまでは職務を継続する方針を表明した上で、辞任するまでに新たな政策を導入したり、政策の大きな変更を行うことは慎むと約束し、重要な予算上の決定は次期首相に委ねると予告した。保守党は秋の党大会までに次期党首の人選を進める見通しだが、ジョンソン首相に対する党内の反発は強いだけに、首相がそれまで留任できるかどうかは不確かだとみられている。11日に保守党の上級議員で構成される委員会が招集され、今後の日程などが決まる模様。
次期党首・首相の候補としては、スナク、ジャビド、ザハウィの各氏のほかに、トラス外相、ウォレス国防相、ブレイバマン法務長官、ハント元外相(2019年の党首選での対立候補)、タジェンダット下院外交特別委員会委員長などの名前があがっている。
ジョンソン首相の辞意表明に対して、最大野党の労働党では、スターマー党首が、「国にとって朗報だが、遅すぎた」とコメント。また欧州連合(EU)の側では、北アイルランド議定書をめぐる軋轢(ジョンソン首相が議定書を一方的に改正する法案を議会に提出したことで、EUとの関係が緊張)を解消する可能性が出てきたとの期待感が、アイルランドのマーティン首相、ベルギーのフェルホフスタット元首相(欧州議会議員)、バルニエ元離脱交渉官などから表明されているが、欧州委員会は英国との協議を通じて解決策を探る意思を再確認するにとどめて、ジョンソン首相の辞任についてはコメントを控えた。識者からは、ブレグジットを支持する保守党が政権を保持する状況に変わりはなく、例えば北アイルランド議定書に関してジョンソン首相と同じく強硬な姿勢を示しているトラス外相などが次期首相に選任されれば、英政府の対EU政策にも大きな違いはないとの見方も出ている。

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