英国:財務相と保健相が辞任、ジョンソン内閣が弱体化

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英国で7月5日、主要閣僚2人が相次いで辞任し、ジョンソン首相の求心力がいっそう低下した。辞任したのはジャビド保健相とスナク財務相で、両者とも首相への信頼の喪失を辞任の理由としてあげた。また両相に続いて、チョーク法務次長と数人の下級大臣も辞任した。
首相はいわゆる「パーティーゲート」(ロックダウン中に首相府で繰り返しパーテイーが開催され、それに関する議会での答弁で首相が虚偽発言を行った疑惑)などで与党・保守党内の支持が揺らいでおり、6月には保守党の党首信任投票も実施された。この投票で首相は6割の支持で信任を得たものの、6月下旬に実施された下院補欠選挙で保守党は惨敗しており、有権者からの不信感の高まりに党内の不安が強まっている。
財務相と保健相の辞任の引き金となったのは、6月末に辞任したピンチャー副院内幹事長をめぐる不祥事だとみられている。ピンチャー氏は6月27日にロンドンの会員制クラブで泥酔し、2人の男性に痴漢行為を働いたと糾弾され、翌28日に副院内幹事長の地位を辞任した(ただし、下院議員としては留任)。7月5日に、首相官邸は、ピンチャー氏が2019年にも類似の行為を批判されていたことをジョンソン首相が知らされていながら、今年2月に副院内幹事長に任命したことを認めた。政府は当初はピンチャー氏の過去の問題を首相は知らなかったと弁明していた。野党はピンチャー氏が議員職からも辞任することを要求している。同氏はジョンソン首相の忠実な側近として知られ、6月の党首信任投票で首相が信任を得た際にも、効果的な党内工作で貢献したと言われる。
なお、首相は素早い後任人事により、ザハウィ教育相を財務相に、バークレー首相官邸首席補佐官を保健相にそれぞれ任命した。教育相の後任にはドネラン高等教育・継続教育担当相が任命された。次期首相候補として有力視されるトラス外相などは首相への支持を表明しているが、複数の保守党議員からは首相の交代を求める声が改めて出ている。