アイオン、ムーブメント国産を計画

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仏アイオン(Aion)は、腕時計のムーブメントの内製化・国産を目指してスイス企業を買収した。機械設備を仏ラシオタ(マルセイユ近郊)に移送し、新工場を建設してムーブメントの量産に乗り出す計画。業界では、ムーブメントの国産化は現実的ではないとして、冷ややかな目を向けている。
アイオンは昨年に若手起業家のアントニー・シマオ氏が設立した。先頃、ファミリーオフィスやビジネスエンジェルから3000万ユーロを調達後にヌーシャテルにあるスイス企業「フェルサ・スイス」を買収。ムーブメント製造に用いられる450台の機械設備を入手した。同社によれば、従業員50人で年間40万体のムーブメントを製造できるという。
シマオ氏は2016年以来、高級腕時計の少量生産の事業を展開してきた。アイオンは、ラシオタに3万平方メートルの用地を確保。ここに大規模な工場を建設し、ムーブメントを国産化して、他社に供給するとともに、自前ブランドHegidおよびLornetの高級時計も製造する計画。2025年の操業開始を目指し、160人の採用(うち40人はスイス人技術者)を予定する。
業界はこの計画について、実現可能性を疑問視している。フランスではムーブメントは長らく前に国産が打ち切られ、スイスなどからの輸入に依存している。失われたノウハウを取り戻して国産化を3年間という短期間で実現し、年間40万体という量産体制を確立するのは至難の業であるという。