カステックス首相が16日に辞表を提出した。マクロン大統領は後任として、エリザベット・ボルヌ労相(61)を首相に指名した。近く組閣人事が発表される。
マクロン大統領は4月の大統領選挙で再選を果たしたが、2期目の新政権における首相の指名は遅れていた。大統領は女性を首相に起用する方針と報じられ、左派及び右派の複数の候補の名前が取り沙汰されたが、最終的に、当初から本命視されていたボルヌ労相が選ばれた。フランスにおける女性首相は、1991-92年のクレッソン首相(ミッテラン左派政権)以来でこれが2人目。
ボルヌ新首相はポリテクニーク(理工科学校)出身の技官として高級官僚を務めた。左派系の人材であり、ジョスパン左派内閣で首相官房スタッフ(1997-2002年)を務めた後、オランド左派政権のロワイヤル環境相(2014-15年)の下で官房長を務めた。知事(行政長官)の職務を務めた後、RATP(パリ交通公団)のCEOに転任した。マクロン大統領は、2017年に発足のフィリップ内閣に、「民間からの登用」者の一人としてボルヌ氏を運輸担当相に起用。マクロン政権下で続いて環境相(2019-20年)と労相(2020-22年)を歴任し、第1期のマクロン政権において、5年間の全期間を通じて閣僚を務めた数少ない人物となった。マクロン大統領は、次期内閣の新機軸として、首相が直接に気候変動対策等を指揮する体制の導入を掲げており、ボルヌ氏は、環境行政の経験を有するというチェックポイントを満たす貴重な人材だった。ボルヌ氏はまた、運輸担当相として国鉄SNCFの制度改正法の成立に貢献。長期ストに直面する中でも態度を曲げなかったことで知られ、労相としても失業保険制度の改正を指揮した。マクロン大統領は2期目に年金改革を実行する方針で、ボルヌ新首相の改革における手腕に期待を寄せているものとみられる。
ボルヌ新首相は、6月の総選挙においてカルバドス県内の選挙区から立候補することになっている。ボルヌ氏はこれまで選挙に出馬したことは一切なく、これが初めての挑戦となる。有利な選挙区からの出馬ではあるが、首相続投の是非をかける形で、初めての選挙に臨むことになる。
ボルヌ氏の首相起用について、左翼政党「不服従のフランス(LFI)」を率いるメランション氏は、社会政策に大ナタを振るった人物の起用であると批判。極右RNも同様の批判を浴びせている。