総選挙の行方は:政界再編の加速あるか

投稿日: カテゴリー: 日刊メディアダイジェスト欧州レポート

大統領選挙を経て、総選挙の行方が当面の関心事として浮上している。政界再編の動きが加速する可能性もある。
総選挙は6月12日(日)と19日(日)に行われる。総選挙は小選挙区制で、議員定数は577人。第1回投票において投票数の過半数を占める候補があれば当選して終了する(ただし、有権者総数の25%以上の得票が条件)が、そうでない場合には、上位の候補者らにより1週間後の決選投票が争われることになる。決選投票には、有権者数の12.5%以上の得票を達成した候補が進出できる(辞退も可能)。
今回の大統領選挙においては、決選投票に進んだマクロン大統領と極右RNのマリーヌ・ルペン候補、そして左翼「不服従のフランス(LFI)」のメランション候補の3人が第1回投票において20%を超える得票率を達成し、他の候補らは群小候補の域を出なかった。これがそのまま政治勢力の力関係に反映されるとすれば、マクロン大統領が率いる中道を軸に左右の一部を取り込んだ勢力、極右、そして左翼という3大勢力が出現するという形になる。RNとLFIは現状ではそれぞれ10議員余りの小勢力に過ぎないが、大統領選挙の余勢を駆って大政党にのし上がる野望を、ルペンとメランションの両氏はそれぞれ公言している。
3候補に押しのけられた格好の既成政党は厳しい選択を迫られる。LFIのメランション氏は、環境政党EELVや共産党、さらに社会党にも合流を呼びかけているが、メランション候補の選挙公約に賛同することを条件として求めており、選挙区ごとの候補者の擁立においても、LFIが有利なポジションを得ようとするのは確実で、どの程度の協力が実現するかはまだわからない。EELVや社会党の内部には、LFIとの協力に賛否両論があり、党内の亀裂を抱えている。もとより、「メランション人気」が、専らアンチ・マクロン票を燃料にしたものである以上、メランション氏や、さらにはその政策が支持されていると安易に考えることはできず、総選挙でメランション陣営が望んだ結果を得られるとは限らない。
保守「共和党」にも党内に根深い分裂がある。マクロン大統領の勢力への合流を望む声が党内にはあり、その一方で、マクロン大統領への対決姿勢を鮮明に打ち出すべきだとする意見もあり、対立が目立つ。極右勢力へのにじり寄りを見せる向きもある。大統領選挙で期待外れの結果に終わった右翼の論客エリック・ゼムール候補は、立ち上げた新党「ルコンケット(失地回復)」を、右翼の全勢力の糾合を図る受け皿にする意欲を示しているが、選挙戦においてRNの幹部らを引き抜いて揺さぶりをかけたゼムール氏をルペン氏が許すはずもなく、ゼムール氏が話題の中心に返り咲こうと思ったら、総選挙で成果を上げるよりほかにない。