大統領選:「マッキンゼー」問題、マクロン大統領の急所に

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大統領選挙の第1回投票を間近に控えて、「マッキンゼー問題」がマクロン大統領の泣き所として浮上している。
糸口を作ったのが、2月17日に刊行されたジャーナリストによる告発本「潜入者(Les Infiltres)」で、この本は、英米系のコンサルティング事務所の政府に対する影響力が強まっていると問題視する内容だった。これと呼応する形で、上院調査委は、コンサルティング事務所に政府が付与した契約が2018年から2021年までに2倍以上に増え、2021年には総額10億ユーロを超えたと指摘。APL(住宅補助手当)の制度改革に関する報告書を作成したマッキンゼーには400万ユーロ近くが支払われており、そのマッキンゼーは過去10年間でフランスにおいて法人税をまったく納税していないとする調査結果も公表しており、野党勢力はこれをマクロン大統領を攻撃する格好の材料としている。マクロン大統領はこれについて、必要がある限りで外部の専門家に委託を行うことは誤りではないと反論し、政府に限らず、コンサルティング事務所への依頼は、所属政党を問わずに自治体の指導者などが盛んに行っていることだとも反撃している。ただ、投資銀行で銀行家を務めたマクロン大統領と、マッキンゼーのようなコンサル事務所の間に親和力が高いのは事実で、2017年の前回大統領選において、マクロン候補の政策ブレーンにはマッキンゼーのスタッフ10名ほどが合流しており、人材の往来は政権発足後も続いている。
この問題で、デュソプト予算相とドモンシャラン公務員相は30日夜に記者会見を開いて、批判に反論。2021年に外部委託が増えたのは、新型コロナウイルス危機が特別要因になったと説明しつつ、規則に則って契約は結ばれており、不正確な内容の批判が見受けられると反論した。