ストラスブール大聖堂の「緑の光線」、姿を消す

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ストラスブール大聖堂で、1年に2度、春分の日と秋分の日に現れる「緑の光線」がこの春に消滅した。地元の文化行政出先機関が22日に認めた。
この「緑の光線」は、ヤコブの息子ユダを象ったステンドグラスの足の部分から入る日光が形作るもので、ちょうど春分の日と秋分の日に、太陽の位置の関係で、緑の光線が堂内の説教台にあるキリスト磔刑像の頭部を数分間に渡り照らす形になっていた。この現象を1972年に「発見」した郷土史家のモーリス・ロザール氏はこれを意図的なメッセージと解釈する説を提出。以来、この緑の光線はニューエイジ派などにもてはやされ、これを目当てにした来訪者も多かった。
大聖堂の建物を管理する国は、改修工事の一環でステンドグラスを修理したが、その機会に緑の光線が消滅した。このステンドグラスは1876年に設置されたもので、そもそもかなり新しく、1972年に改修がなされている。緑の光線が「発見」されたのはその直後であり、この改修時に、素通しのガラスが用いられたことが、「緑の光線」出現の原因であると考えられる。今回の改修においては他の部分と均質のガラスに取り換えられ、その結果、緑の光線も消滅した。
ロザール氏は今回の改修について、「ストラスブール市民にとって、また文化にとって厳しい一撃であり、嘆かわしい限りだ」とコメントしている。教会側は、信仰とは無縁な解釈と群衆を引き起こしてやまないこの現象を快く思っておらず、「緑の光線」の消滅に安堵している。