フランスの自動車部門貿易赤字、2021年に過去最大の179億ユーロ

投稿日: カテゴリー: 日刊メディアダイジェスト欧州自動車・モビリティ情報

フランスの自動車部門の貿易赤字は2021年に179億ユーロとなり、過去最高記録を更新した。車両に限ると、輸出額は306億ユーロ、輸入額は460億ユーロとなり、収支は154億ユーロの赤字となった。赤字額は前年比で5億ユーロの増加を記録した。自動車部品の貿易赤字も19億ユーロの大幅増を記録し、過去最大の25億ユーロに達した。自動車部品の貿易収支は2016年までは黒字だったが、2016年以来は赤字が続いている。仏メーカーによる外国生産において、フランスの部品会社は、従来は輸出で対応していたが、現地生産に切り替える圧力が高まり、これが貿易収支の赤字拡大を招いている。なお、車載バッテリーは自動車部門の貿易収支には計上されていないため、これを含めるとすると貿易収支はさらに悪化することになる。
車両の貿易収支の悪化は、国内でよく売れているモデルが国内生産されておらず、輸入が増えていることによる。フランスのメーカーは、国内生産は利益率が高い高級モデルなどに集約し、大衆車は外国生産に切り替える動きを進めてきた。この結果、2021年には、トップセールス10モデルのうち、国内生産はプジョー3008(7位)とトヨタ「ヤリス」(8位)のみで、10モデルのうち9つはフランスのブランドであるにもかかわらず、生産はいずれも外国となっている。トップのプジョー208はモロッコとスロバキア、2位のルノー「クリオ」はトルコとスロベニア、ダチア(ルノー傘下)のサンデロはモロッコとルーマニアで生産されている。短期的には、ルノーがドゥエ工場でメガーヌのEVバージョンの生産開始を予定する(年産10万台を計画)が、ペースが上がるまでに時間がかかり、他の工場の生産減もあって国内生産が大きく伸びるとは考えられない。ステランティスのミュルーズ工場(プジョー)はプジョー308の生産開始で増産が見込めるものの、生産体制を変更したこともあって、大幅な増産は期待できない。より中期的には、ルノーがドゥエ工場で次世代EVモデル「R5」の生産を開始する予定で、2025年より30万台の生産が予定されている。