政府調査機関、相続税制の改革を提言

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首相府下の調査機関であるCAE(経済分析評議会)は21日、相続税制に関する報告書を公表した。フランスが再び戦前のような「相続資産家」の社会となり、貧富の差の拡大を招いていると指摘し、踏み込んだ税制改革を勧告する内容。
報告書によると、所得水準上位1%の世帯が家計全資産に占める割合は、1985年には15%だったが、2015年には25%まで上昇した。この世帯の保有資産の60%を相続資産が占めるに至っており、この割合は1970年代初頭には35%に過ぎなかった。所得水準上位0.1%の世帯の相続資産額は、フランスの相続資産額の中央値(7万ユーロ)の180倍に相当する。その一方で、勤労所得の中央値と、所得水準上位0.1%の勤労所得の乖離は10倍程度に過ぎず、これは、遺産がなければ富裕者にはなれないという現実があることを示唆している。
報告書は、現行の相続税制はそのような不均衡を是正する役割を果たしていないと指摘。特に、各種の控除措置の数と規模が大きく、これがもっぱら最富裕層の利益になっているとした。相続税の最高課税率は45%に設定されているが、所得上位0.1%の世帯では、実効税率が10%にまで下がっている。最高課税率は諸外国に比べて相対的に高く、このために、中の上という所得水準の世帯において、相続課税の圧力が不当に大きいという感覚が広がる結果を招いている。
報告書はその上で、相続税制とそれがもたらす結果について人々がよく知らされていないことが、改革の障害になっていると指摘し、改善を求めた。具体的な改革の方向性としては、生前贈与などの形で最大限に節税をするやり方を阻むため、資産の包括的な流れを把握し、これを課税に反映させる方式を提案。生命保険を控除対象から外すことや、一族経営企業の継承における優遇税制の廃止(この優遇税制は当該企業による投資の活性化にはつながっていないと指摘)なども提案した。