2021年11月30日 編集後記

投稿日: カテゴリー: アライグマ編集長の日々雑感

フランスの「エコロジーの顔」的な存在だったニコラ・ユロさんが複数の女性に性的暴力を働いていた疑いが浮上しているが、実は故ミッテラン大統領の孫であるパスカル・ミッテランさんからも2008年に強姦罪で訴えられていた。事件が起きたのは1998年といい、パスカルさんはあえて時効成立を待ってから当局に訴えた。ことを公にしたくなかったのだという。しかし、このことが2018年にメディアにより報じられ、おばに当たる作家のマザリーヌ・パンジョーさんも2019年にこの強姦事件を題材とした小説を発表した。こうしたことがきっかけで、ほかの被害者も過去にユロさんから受けた性被害について証言する気持ちになったという。今回は国営放送のフランス2が放送したドキュメンタリーで新たに4人の女性がユロさんによる性暴力を告発し、さらに別の2人の女性が書簡で証言した。1人の女性は事件当時に未成年だったので、これについて検察が捜査に着手した。全ての訴えが時効を過ぎており、ユロさん本人は全面的に否認している(推定無罪の原則は重要)。しかし合計7人もの(互いに知り合いですらない)女性から告発されたのでは、疑いを払拭するのは難しいし、エコロジストとしての公的な役割はもう終わりだろう。エコロジーのイメージダウンという意味でも残念な事態だが、どのように立派な思想や主義を唱えていても、権威や権力や富を握ってしまった男の行動を究極的に支配するのは性欲にほかならない、という人類史の凡庸な永遠の真理(?)にまた行き着いてしまったという意味では、がっかりせざるをえない。エコロジーは地球環境を変えることはで きるかも知れないが、人間を変えることはできないらしい(いや、変わらないのは男だけか?)。