オーストラリア政府、仏ナバル・グループとの次期潜水艦契約を打ち切り

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オーストラリア政府は、次期潜水艦の開発計画を見直し、仏ナバル・グループとの契約を打ち切る方針を固めた。15日にモリソン首相がバイデン米大統領およびジョンソン英首相とリモート会談後に発表した。会談の機会に、米国側は原子力潜水艦の導入に協力することを約束したという。
ナバル・グループ(当時はDCNS)は2016年に、日独の競合を退けてこの契約を獲得していた。12隻の従来型推進の潜水艦を、仏シュフラン級原子力潜水艦をベースに開発し、アタック級潜水艦としてオーストラリア海軍に供給する計画だった。開発計画には遅れや予算の膨張も生じ、両国間の軋轢を招いていたが、モリソン首相は去る6月、マクロン大統領と会談した際に、契約への支持の念を表明しており、問題は一段落したと考えられていた。
オーストラリア政府の翻意の背景には、バイデン米政権の熱心な売り込みがあったと考えられる。米政権はAUKUSと呼ばれる米英オーストラリア3ヵ国による協力体制の深化を掲げて潜水艦とミサイルを含めた協力を売り込み、中国の脅威への警戒を強めるオーストラリアがこれに乗ったというストーリーであるらしい。
ナバル・グループにとってプロジェクトは、これから基本設計のフェーズに入るという段階にあった。それまでの作業の代金は回収されているものの、失注はイメージの点でも打撃になる。また、オフセット条項による現地生産の履行を目的として、ナバル・グループは現地ですでに300人を超える従業員を雇用しており、現地下請けに総額10億ドル規模の発注をすると予告したばかりだった。契約解消に伴う賠償問題は今後の交渉に委ねられる。