バイヤール、右翼系人材の起用など断念

投稿日: カテゴリー: 日刊メディアダイジェスト欧州レポート

仏出版社バイヤールは2日、人事等の決定2件を撤回すると発表した。従業員らが強く反対したことを踏まえて断念した。
バイヤールはカトリック系の出版社で、アウグスティヌス単式修道会が保有している。カトリック系の日刊紙ラクロワや雑誌ルペルランなどの新聞雑誌を刊行している。経営陣は、ジャーナリスト養成学校ESJパリへの出資と、戦略・開発部長にアルバン・デュロスチュ氏を起用することを決めたが、ジャーナリストをはじめとする同社従業員がこれに反対し、抗議行動を展開していた。経営側はこれら2件の決定を白紙に戻した。
従業員らは、バイヤールが右傾化することを懸念して抗議行動を展開した。バイヤールが出資を決めたESJパリには、右翼への肩入れで知られる実業家のバンサン・ボロレ氏(ビベンディを保有)をはじめとする大物実業家ら(ダッソー一族、ロドルフ・サーデ氏、ベルナール・アルノー氏ら)も出資を決めているが、従業員らは、同校を「反ウォーキズムで企業・市場経済寄りの学校にする」との計画があるとして、キリスト教社会派というバイヤール社の社是に相反すると主張して反対していた。また、アルバン・デュロスチュ氏については、カトリック伝統派にして自由主義者という立場で知られる資産家のピエールエドゥアール・ステラン氏のファンドに勤務していたことが問題視されていた。ステラン氏は、自由主義右派と極右勢力による政権樹立を後押しするプロジェクト(コートネーム「ペリクレス」)を推進しているとされ、デュロスチュ氏は、本人は否定しているものの、このプロジェクトに関わっていたという噂が流れていた。
今回の一件の背景には、メディア界の当事者らが極右的な勢力の浸透に懸念を強めていることがある。バイヤールは2024年6月期に480万ユーロの純損失を記録しており、経営側では、今回の人事は断念したものの、戦略・開発部長を任命して立て直しを図る方針に変更はないと説明している。