パリ五輪:鉄道破壊行為の背後に極左過激派か、開会式の内容巡り論争も

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パリ五輪開会式の直前に鉄道を狙った破壊行為が生じた件で、国鉄SNCFは29日(月)朝には平常の運行を全域で再開した。28日までは一部で混乱が続いた。
被害を受けたのは、クルタラン(ウールエロワール県)、クロワジーユ(パドカレー県)、パニーシュルモゼル(ムルトエモゼル県)の3ヵ所で、線路脇の通信ケーブルが放火され、機能しなくなった。このほか、ベルジニー(ヨン県)の施設は放火未遂の被害を受けた。ケーブルの破損のため、高速鉄道(TGV)の運行は一時麻痺状態に陥り、80万人の旅客に影響が出た。
当局は、組織犯罪担当の検事局の下で捜査を開始。テロ容疑は採用されず、「国家の基本的利益」への破壊行為などの容疑で捜査が進められている。この容疑での最高刑は、禁固15年と罰金22万5000ユーロとなっている。犯人グループの輪郭はまだつかめていないが、「予期せぬ選手団」を名乗るグループが、匿名プラットフォーム「Riseup」上で「支持声明」を発表。資本主義経済を代表する五輪への憎しみを表明する内容で、この声明文は極左系グループによるものと考えられる。声明文と犯人グループとの関係は明らかではないものの、環境原理主義・極左過激派は、携帯基地局の鉄塔放火といった犯罪行為を近年に行っており、そうした犯罪と今回の事件の類縁性が指摘されている。鉄道は伝統的に極左過激派の格好の標的でもある。
他方、26日夕方に行われた五輪開会式は、競技場外での初の開催という新機軸を打ち出したが、あいにくの雨の中でも滞りなく終了した。国際的な評判も上々で、主催者側は賭けに勝ち、面目を保った。芸術総監督の重責を担ったトマ・ジョリ氏は、半ズボンにハイソックスというピーターパンのような姿で取材に応じ、開かれた五輪、ダイバーシティーのメッセージを前面に打ち出した開会式の演出において、自らもそうしたメッセージの体現者という立ち位置で臨んだ。それでも論争はあり、特に、カナの婚礼を意識した活人画と、続いてほぼ裸のディオニュソス(歌手・俳優のフィリップ・カトリーヌが演じる)が登場するシークエンスは、キリスト教の精神を愚弄する内容だとして、カトリック司教会が抗議のコメントを発表するなどした。