総選挙の結果を受けて、最大勢力となった左派連合「新民衆戦線」は首相候補選びの協議に着手した。マクロン大統領に対して、憲政の常道に従って、最大勢力から首相を任命するよう要求している。
マクロン大統領は投開票の7日夜の時点から、熟考して判断を下すと表明しており、どのような決定をどのような日程で下すのかは明らかにしていない。大統領周辺からは、左派連合の最左翼である「不服従のフランス(LFI)」と、極右勢力の両方を排除した幅広い連立を形成し、主導権を維持する方向で接触が続いているという説明も聞こえてくる。
そうした中で、左派連合の側では、大統領派の切り崩しにはなびかずに、結束を維持して事に当たると繰り返しており、今週中にも首相候補を一本化し、マクロン大統領に指名を求めるとの展望を示している。ただ、最大勢力とはいえ、左派連合の議席数では過半数には遠く及ばず、首相指名を得たとしても議会で信任を得られるか心もとない。政局運営も極めて困難になるのは確実で、例えば与党勢力の左派を切り崩して過半数はないにせよある程度の規模を確保するという作戦も考えられる。現段階では見通しがまだ開けていないが、首相候補選びにはそうした展望が影響を及ぼすことも考えられる。
結束を強調してはいるが、左派連合は一枚岩ではない。特に、左翼政党LFIを率いるメランション氏は、自ら首相を務めることに乗り気ではあるようだが、尖った人物であるために左派連合内部にさえアンチも多い。社会党は、一時は勢力を弱めていたが、今回の選挙ではかなり勢いを増しており、無所属議員や、LFIを様々な理由で離脱した議員なども取り込めば、LFIを上回る院内会派を形成できる可能性もある。そのため、首相候補選びでは声を高めてくることが考えられる。環境派EELVでは、トンドリエ代表が今回の総選挙において、自らは出馬していないがメディア稼働を増やして反極右をアピールし、一定の人気を集めており、左派系日刊紙リベラシオンなどは新時代のリーダーとして持ち上げている。左派連合内のつばぜり合いも活発化しており、先の読めない状況が続いている。