西洋の没落

投稿日: カテゴリー: アライグマ編集長の日々雑感

スイスで6月15-16日にウクライナ和平に関する国際会議が開催され、約100ヵ国が参加し、ウクライナをはじめとする
すべての国の主権、独立、領土一体性の原則を再確認する最終宣言を採択して閉幕した。ただし、宣言を承認したのは
79ヵ国のみで、BRICSは賛成しなかった。このうち、ロシアは招待されず、中国も不参加で、ブラジル、インド、南ア
は棄権。サウジアラビアも棄権した。ウクライナに対する国際的支持が拡大したとは言えず、BRICSを中心とするグロ
ーバルサウスと欧米の対立による新冷戦構造の深まりを再確認するだけに終わったとの感もある。中立国であるスイス
がウクライナ和平に関する国際会議を開催した積極性を評価する向きもあるが、そもそもロシアはウクライナの無条件
降伏以外の和平に応じるつもりがなく、中国がロシアを支援し続ける限り、状況は変わらないだろう。思えば、ベルリ
ンの壁が壊れたときに、ロシアまで含めた大欧州が西欧的な民主主義と価値観を共有するに至るのではないかという幻
想を抱いた人は少なくなかったはずだが、これは夢物語で終わり、今やむしろ西欧の価値観は西欧諸国自体も含めた世
界中で後退しつつある。西欧文明の自己批判ともいうべきウォーキズムの浸透(自らの根拠や正当性を常に問い直すの
は西欧の特徴であり長所だが、自己破壊や自殺に行き着くリスクも内包している)、(自らの根拠や正当性を問い直さ
ないので常に自信と確信に満ちた)イスラム教の影響拡大、(危機に直面して新たな価値やビジョンを創造できずに過
去の栄光にしがみつく)極右の台頭などがその兆候だろう。どんな偉大な文明も必ず終わりを迎える。これは仕方のな
いことだが、前世紀からしばしば指摘されてきた西欧の没落がいよいよ本格化しつつあるのではなかろうか。