フィンランドには行ったことがないので、どんな雰囲気の国かわからないが、野蛮で粗暴な大熊ロシアと隣り合うという宿命的な不幸を日本と共有している点ですでに共感できる面がある。しかし、例えばフィンランドの教育制度は世界最高水準との定評があり、中学レベルの数学の問題が解けないような低学力の大学生を生んでしまった日本とは相違点も多そうだ。30歳代の若い女性が首相を務めている点も、40代の男性ですらめったに総理大臣になれない日本(歴代総理で就任時年齢が40歳代だったのは伊藤博文、黒田清隆、近衞文麿ぐらいか)とは大違いだ。そもそも、年齢に妙なこだわりのある日本社会では30歳代の女性を「若い」とは言わないのかも知れないが、これもいかがなものか。それはともかく颯爽と登場して政界に新風を吹き込んだマリン首相がこのところ私的な動画や画像の流出で批判を浴びて、窮地に陥っている。首相自身がセレブと一緒に踊ったりしている動画については、自分にもプライベートな生活があっていいはずと弁明したが、首相公邸でトップレスの女性2人がキスをしている画像が流出したことで涙ながらの謝罪を余儀なくされたそうだ。違法行為でない限り、首相が私生活で何をしようが全く問題はない、という考え方に筆者は賛成だが、動画や画像などの情報がダダ漏れに流出するのはセキュリティの観点からやはり不安がある。パーティーに参加した誰かがリークしたに違いなく、そのような人を安易に近づけてしまうのは首相として自覚が足りないと言われても仕方がない。ロシアが隣国なのは避けようがない不幸だが、マリン首相はNATO加盟という思い切った対策でこれに勇敢に対処している。セキュリティを脅かすような友人・知人との交流は宿命ではなく、自分の選択で避けることができるのだから、そちらにも留意して、若い女性首相に対する世論の信頼を回復してもらいたいものだ。