1938年にヒトラーとスターリンが結んだ独ソ不可侵条約は、ナチスと共産主義という20世紀の代表的な全体主義による欧州支配の企てに有利な状況を作り出し、第二次世界大戦の勃発を促す重要な要因になったと考えられている。現在、ウクライナを挟んで、ロシアとNATOが対立している中で、(中東諸国などへは武器を輸出している)ドイツはウクライナへの武器供与を拒否し、ロシアになにかと忖度する姿勢を崩しておらず、NATO内部の獅子身中の虫的な役割を演じつつある。そもそも、環境配慮の観点から原子力発電を全廃することを決めておきながら、代表的な化石燃料である石炭や天然ガスを多用し、ガスの調達に関してはロシアに全面的に依存するという矛盾極まりない政策を進めるドイツという国をどのように理解すればいいのか? 理性だけではなかなか難しい。歴史的・思想的に非合理・非理性に支配されてきた国という点でもロシアとドイツは似ているのかもしれない。両国の歴史を彩る妙に観念的な思想や行動は百害あって一利なしだと、筆者のような散文的精神の持ち主は感じるのだが、そういうものに惹かれる人もいるに違いない。それはそれでけっこうだが、ロシアとドイツの奇妙な結託が、欧州に新たな戦争をもたらす要因になるのではないかと不安だ。フランスから見ると、本当に厄介な隣人たちばかりだ(やれやれ)。