12日発表のINSEE統計によると、6月末時点の失業率(ILO基準)は7.4%となり、3月末時点とほぼ同水準にとどまった。新型コロナウイルス危機直前の2019年末時点と比べると0.8ポイント低い水準となり、雇用情勢の改善は続いている。マクロン政権が発足した直後の2017年6月末からでは2.1ポイントの低下を記録している。
マクロン大統領は、再選を決めるに当たり、2期目の任期末に完全雇用を実現することを目標に掲げた。完全雇用は失業率で5%前後と考えられ、大統領がこの公約を達成するには、1期目と同じ規模の失業率の引き下げを実現しなければならない。完全雇用が実現すれば、1970年代末以来で初めてとなる。当時は石油ショックの到来により高度成長期が終わりを告げ、それ以来でフランスでは完全雇用は実現していない。
2021年の労働力人口は3010万人前後であり、2ポイントの失業率低下は、60万人の失業者減(226万人から166万人へ)に相当する。失業率が低下すると、それまでは就業を諦めていた人々も労働市場に参入し、労働力人口が増える効果が生じるとみられることから、その分も考慮すると、100万人近くの雇用を追加で創出する必要が生じる。労働市場の今後の推移に関する見方は微妙であり、経済研究所のOFCEは、このところ労働生産性の低下を招く形で雇用増大が続いていたことから、今後はしかるべき時点で生産性の改善に転じ、雇用創出にブレーキがかかり、さらには余剰な雇用(50万人程度と推定)が削減されると予想している。より楽観的な見方もあるが、完全雇用の実現には、政府の積極的な支援策と労働市場の構造的な改革が必要とみられている。