欧州中銀(ECB)は21日に開いた定例理事会で50ベーシスポイントの利上げを決定した。6月時点で予告していた25ベーシスポイントの利上げに比べて高い利上げ幅を選択した。欧州中銀による利上げ決定は11年ぶり。英米などの主要国に遅れて利上げに踏み切った。
リファイナンス金利は0%から0.5%へ引き上げられた。上限金利は0.75%となった。また、中銀預金金利は0%となり、マイナス金利から脱した。欧州中銀は、ユーロ圏のインフレ率が8.6%と高く、「当面は望ましくない高い水準にとどまる」見通しであることを挙げて、利上げ決定を正当化した。欧州中銀はまた、金融政策の展望を示すフォワード・ガイダンスを廃止することを決定。欧州中銀は6月の時点では、7月に25ベーシスポイントの利上げを行い、9月には25ベーシスポイントか50ベーシスポイントの利上げを続いて行うと予告していたが、今回の理事会決定では利上げ幅を守らず、今後の展望も明示しないことを決めた。
今回の利上げ決定は、イタリアのドラギ首相の辞任とタイミングが重なった。債務水準が高いイタリアの政局混乱を受けて、長期金利スプレッドが拡大し、ユーロ圏の求心力が損なわれる懸念も大きく、利上げはそうした動きを加速させる恐れもある。欧州中銀は今回の理事会で、利上げ決定と共に、TPI(Transmission Protecion Instrument)と呼ばれる介入手段の導入をあわせて決定。長期金利の上昇に見舞われる国の国債を選択的に買い入れることを通じて、金利政策がユーロ圏の全体に浸透するよう計らうという趣旨で、欧州中銀のラガルド総裁は、記者会見において、イタリアの名前は出さずに、ユーロ圏のすべての国に適用可能であることを強調した。欧州中銀内では、TPIのような介入手段の導入に批判的なタカ派も存在しており、予定より大幅の利上げを決めたのは、こうしたタカ派の了解を取り付けるための交換条件だった可能性もある。TPI実施の条件などは明らかにされていないが、対象国が「過剰な財政赤字」の是正手続きの対象になっていないなど、財政運営上の基準を守っていることが適用資格になる旨が公表されている。