極右RNのマリーヌ・ルペン候補は得票率23.15%で決選投票に進んだ。この得票率は、やはり決選投票に進出した前回選挙時の21.30%を上回っており、一見すると好材料のようにみえる。ただ、当選を狙うには、ルペン候補に打てる手は限られている。
ルペン候補は選挙戦において、購買力増強を柱に据えたキャンペーンを展開。右翼のライバルとして出現したゼムール候補が、移民排斥などで過激な立場を打ち出したのとは対照的に、「タカ派隠し」により票を伸ばした感がある。「普通の政党」の「普通の政治家」という印象を植え付けることに努めてきたルペン候補の戦略が成果を上げた格好であり、派手に暴れたゼムール候補は、ルペン候補にとって案山子代わりになり、むしろ好都合だった。そのゼムール候補は、敗退を経てルペン候補の支持を表明し、自らの支持者らにルペン候補への投票を呼びかけた。得票率7.06%のゼムール候補の合流を得られたのは好都合ではあり、ほかに右翼「立ち上がれフランス」のデュポンテニャン候補(得票率2.06%)もルペン候補支持を表明、共和党の一部も、「マクロン大統領に投票しない」ことを呼びかける勢力があり、これまでの選挙よりも、ルペン候補は決選投票に向けた伸び代がある。ただ、ゼムール候補とは確執もあり、なにより安易にタッグを組めば「普通の政治家」の仮面をかぶることはできなくなり、支持層を広げるのは難しくなる。
今回の選挙では、第3位になった左翼「不服従のフランス」のメランション候補候補の追い上げも大きかった。メランション候補は得票率が21.95%となり、ルペン候補との差はわずか1.2ポイントに過ぎなかった。メランション候補を支持する左寄りの民衆層を切り崩せれば勝機もある。このため、ルペン候補は10日夜に支持者らを前に行ったスピーチで、社会的配慮をにじませた公約を掲げて、国民を反マクロンで結集させる意欲を示した。メランション候補本人は同日、「ルペン候補には1票たりとも与えない」よう支持者らに呼び掛けたが、「反マクロン」色が鮮明な有権者も含まれており、その規模が選挙結果を左右する鍵の一つになる。