大統領選挙第1回投票:マクロン大統領と極右マリーヌ・ルペン候補が決選投票に

投稿日: カテゴリー: 日刊メディアダイジェスト欧州レポート

大統領選挙の第1回投票の投開票が10日に行われた。予想通りにマクロン大統領と極右RNのマリーヌ・ルペン候補が決選投票進出を決めた。決選投票は2週間後の24日(日)に行われる。
[投票結果・投票率]
97%の開票終了時点の速報値によると、投票率は74.86%(棄権率25.14%)と低めだった。棄権率は前回2012年の大統領選挙第1回投票の22.2%をかなり上回っているが、過去最高だった2002年の28.4%よりは低かった。ちなみに、2002年は初めて極右のジャンマリー・ルペン候補(マリーヌ・ルペン候補の父)が決選投票への進出を決めており、この時は国民に大きな衝撃を与えていた。
マクロン大統領の得票率は27.6%となり、マリーヌ・ルペン候補の23.41%にかなりの差をつけて決選投票に駒を進めた。投票日直前では、ルペン候補の支持率上昇が伝えられ、ルペン候補がトップで折り返す可能性を指摘する向きもあった。大統領陣営も危機感を強めてテコ入れを図り、ピンチを伝える報道も追い風となったのか、結局、上位2候補は世論調査が示していたのとほとんど変わらない票差での折り返しとなった。
第3位は左翼「不服従のフランス」のメランション候補が21.95%で続いた。同候補は予想を上回る得票率を達成し、20%超えを果たしたものの2位にまでは届かなかった。それ以外の候補はいずれも10%に満たず、大きな差が開いた。一時は注目された右翼論客のゼムール候補は得票率が7.05%と振るわなかった。既成政党の候補はさらに支持が低迷し、保守「共和党」のペクレス候補は得票率が4.79%に低迷し、さらに引き離されて第5位にとどまった。得票率5%ラインは、選挙資金の公的援助を得る下限となっており、これを割り込んだのは既成政党にとって屈辱と言える。共和党候補としての得票率も過去最低を記録した。以下、環境政党EELVのジャド候補が4.58%で6位、7位は農村派のラサール候補(3.16%)、8位は共産党のルーセル候補(2.31%)、9位は右翼「立ち上がれフランス」のデュポンテニャン候補(2.07%)で続き、社会党のイダルゴ候補は1.74%と、定位置の泡沫候補(極左のプトゥ候補の0.77%とアルトー候補の0.57%)を上回るのみという惨敗を喫した。
[既成政党の後退目立つ]
選挙結果は、有権者らが、第1回投票から「意義ある投票」を目指したことを示している。投票日直前に接戦が伝えられたことで、マクロン大統領とルペン候補の主要2候補、そして、決選投票に残る可能性が報じられていたメランション候補の上位3人に票が集中する格好になった。右翼ゼムール候補の票はかなりの部分がルペン候補に吸い取られたと考えられる。共和党のペクレス候補の場合も、やはりかなりの部分がマクロン大統領に流れたものと考えられる。社会党イダルゴ候補や、ジャド候補(EELV)は、メランション候補に吸い寄せられた有権者層が多く、イダルゴ候補の場合は特に、マクロン大統領にも票を奪われて、両面から浸食されたのが惨敗の理由と考えられる。大統領選挙は個人的な人気投票という側面が大きく、それだけでは政党としての実力を推し測ることはできないが、特に既成大政党にとっては深刻な動揺を引き起こさずにはいない結果となった。
[決選投票は接戦に]
決選投票においては、マクロン大統領の優位は動かないものの、同じ顔合わせとなった前回大統領選と比べると接戦になると予想される。前回の決選投票はほぼ2対1の比率でマクロン大統領が勝利したが、世論調査では、マクロン大統領の支持率が54%、ルペン候補の支持率が46%と、かなり接近している。マクロン大統領は極右脅威論を掲げて自らへの支持を国民に呼びかけてゆくことになる。
敗退した他の候補のうち、メランション候補は、「極右ルペン候補に1票たりとも与えてはならない」と述べて、反極右の立場を再確認したが、マクロン大統領への投票を呼びかけることはなかった。右翼ゼムール候補は、ルペン候補への投票を支持者らに対して呼びかけた。共和党のペクレス候補は、個人的にマクロン大統領に投票すると言明したが、支持者らに対して投票行動の呼びかけはしなかった。共和党内には極右との連携を探る勢力もあり、大統領候補の指名投票をペクレス候補と争ったシオティ下院議員は、「マクロン大統領には投票しない」と言明している。環境政党EELVのジャド候補は、極右排除の投票をするよう呼びかけた。社会党のイダルゴ候補もマクロン大統領への投票を呼びかけた。