気候変動への対応を迫られるワイン業界

投稿日: カテゴリー: 日刊メディアダイジェスト欧州レポート

「ワイン・パリ・ヴィネクスポ」の開催にあわせて、レゼコー紙は11日付で、気候変動問題へのワイン業界の対応に関する特集記事を掲載した。
ワイン業界にとって、温暖化はこれまで、どちらかといえば利益をもたらす方向に働いていた。2020年の気温は19世紀と比べて1.2度ほど高く、収穫時期が全体として早くなる傾向にある。ボルドー・サンテミリオンやコートデュローヌでは25年間で15日ほど早くなり、アルザスでは26日間早くなっている。栽培期間の短縮は業者にとって好都合だが、近年では変動のマイナスの影響が目立つようになった。干ばつと遅霜の影響が特に大きく、2019年のラングドック地方における干ばつと、2021年4月の全国的な遅霜の影響は、人々の意識を高めるきっかけを作った。専門家によると、過去20年間でワイン用ブドウ畑の5%余りが干ばつの影響を受けており、時期が今までよりも早く、また強度が高くなっている。また、年々、気温が上昇する時期が早くなっているため、逆に3-4月に霜害が生じて、生育を始めた芽が枯れるという被害が増えている。2017年、2019年、2021年にこの種の被害が発生しており、発生頻度が高まっている。集中豪雨が発生する頻度も高まっており、収穫前の秋口に豪雨や洪水の被害が増えることも懸念されている。
ボルドーでは、発芽が早く、そのため霜害にも弱いメルローより、生育が遅いカベルネ・フランやプチ・ヴェルドを優先するなど、新たな気候状況への対応を探る動きもある。サンテミリオンのシュバルブランでは、ブドウ畑の中に混成的な植樹をして、土地の肥沃化を図るとともに、害虫を駆除する役割を果たすコウモリの生息地を確保するといった試みも進められている。