パリ高裁は24日、タピ事件の刑事事件裁判の控訴審判決を言い渡した。5人の被告人のうち4人に有罪判決を言い渡した。有罪判決を受けた通信大手オレンジのリシャールCEOは1月までに辞任することを同日に明らかにした。
今回の裁判では、実業家のベルナール・タピ氏が、国有銀行クレディリヨネとの係争において、調停裁判で有利な結果が出るように手配した疑惑が争われていた。2008年の調停裁判では、タピ氏の主張が認められ、4億300万ユーロの賠償金がタピ氏に支払われたが、不正の疑いが浮上したことにより、民事訴訟を通じて調停裁判の決定が無効とされ、タピ氏には賠償金の返還が命じられている。その後、刑事事件としてタピ氏をはじめとする関係者が起訴されたが、パリ地裁の第1審判決では、詐欺と公金横領の存在を示す証拠がないことを理由に全員に無罪判決が下された。検察側による控訴を経て、パリ高裁は被告人のうち4人に逆転の有罪判決を言い渡した。
タピ氏本人は10月に死去したため、訴追が消滅している。裁判所は、被告人のうち、タピ氏の弁護士であるラントゥルヌ氏と、調停裁判で裁判官を務めたエストゥープ氏には、判決を左右する目的での請託の関係があったと認めて、詐欺と公金横領の罪で、前者には禁固3年(実刑部分1年)と罰金30万ユーロ、後者には禁固3年(執行猶予なし)と罰金30万ユーロの有罪判決を言い渡した。調停裁判に関わった国の側の関係者では、当時にラガルド経済相の官房長を務めていたリシャール氏(オレンジの現CEO)と、CDR(クレディリヨネの清算を担当する公社)のロッキ会長(当時)が有罪判決を受けた。パリ高裁は、両者が詐欺の存在を把握していなかったと認めて、詐欺共犯の容疑については無罪としたが、十分な注意を払わず、調停裁判の結果を控訴せず受け入れる上で決定的な役割を果たしたと認定。公金横領共犯の罪で、リシャール氏には執行猶予付き禁固1年と5万ユーロの罰金を、ロッキ氏には執行猶予付き禁固2年と罰金2万5000ユーロを、それぞれ言い渡した。残りの被告人であるCDRの責任者は無罪判決を受けた。
リシャール氏は判決を不服として上告すると予告した。オレンジは同日夜に取締役会の会合を招集し、この機会に、リシャール氏の辞任が決まった。