10年ほど前に米情報機関NSAが独メルケル首相の携帯電話を盗聴していた疑惑が持ち上がったが、ドイツ政府はその後も盗聴やハッキングに対する対策を十分に講じないままだったのか、ドイツ軍幹部のオンライン会議の内容がロシアにより盗聴されてしまった。ウクライナへの軍事支援に関する重要な情報が漏洩し、軍だけでなく政府も野党や同盟国の批判を浴びている。漏洩自体も由々しき事態だが、漏れた情報により、シュルツ政権が長距離巡航ミサイル「タウルス」の供与について、ウクライナから2023年5月に要請を受けてから、実質的に何もせずにただ時間稼ぎをしていただけだったことが判明したことも批判されている。シュルツ首相と与党主軸の社民党は平和主義者だから、ミサイルの供与を躊躇するのはわかるが、仏大統領が示唆した地上軍派兵の可能性を言下に除外するなど、あまりに及び腰の姿勢は、ロシアを大胆にさせるだけで、対ロシア戦略として果たして賢明かどうか疑問だ。平和はもちろん大切だが、平和を実現し、守る上で、平和主義ほど厄介で逆効果なものもないことは歴史が何度も証明しているとおりだ。抑止のためのブラフも少し学んだほうがいいのではないだろうか。