スペインのサンチェス首相が議会で多数派の形成に成功して、続投を決めた。首相の本来の政治的立場に合致する左派や中道左派だけでは十分な議席を確保できず、カタルーニャの独立派政党や中道右派の地域主義政党などまでを取り込んだ寄せ集め的な多数派であり、各党の支持を取り付けるために、随分と譲歩や妥協も強いられた。特にカタルーニャ独立派への恩赦の約束はスペインの歴史に禍根を残す恐れもある。節操のないご都合主義だとの批判もあるだろう。しかし、政治の現場に妥協や取引はつきものなのだから、恥じる理由はない。欧州諸国の右傾化が指摘される中で、極右参加政権の成立を阻止したのは手柄だ。安定的な多数派もないままに、2018年から綱渡り的に政権を保持してきたサンチェス首相の巧みな手腕には脱帽せざるを得ない。