フランスとニューカレドニア

投稿日: カテゴリー: アライグマ編集長の日々雑感

筆者が留学生としてフランスに来た1980年代後半に、ある学校の学生食堂にいたら、一群の学生とその指導者らしき教員がニューカレドニアの地位について議論を始め、脇でなんとなく聞いていた筆者にもいきなり意見を求めてきたので慌てた覚えがある。その教員は「フランス人があのような遠方の地をフランスの領土だと考えていること自体が君の目には根本的におかしいのではないか」と、やはり遠方から来た留学生の筆者に暗に同意を求めたのだが、筆者の反応が鈍かったので、がっかりした様子だった。フランスのネオコロニアリズムを批判すれば、きっと喜んだに違いないと今でも残念に思うが、実は筆者はフランスが大西洋・ 太平洋・インド洋などに過去の植民地に由来する海外拠点とそれらを取り巻く領海を保有していることをむしろ良いことだと考えている。少なくとも、太平洋・インド洋においてフランスが睨みをきかせれば、どこやらの専制国家が勢力圏を拡大し続け、民主主義国家が航海の自由を奪われるような事態が成立するのを遅らせる効果はあるだろう。腐っても鯛、というが、フランスの国際的影響力が衰えていることばかりが強調される中で、時にはかつての植民地大国が今も保持している安全保障上の底力をもっとまともに評価してもいいのではないかという気がする。なお、植民地だろうが、独立国家だろうが、支配・被支配の関係はどこにでも必ずある。仮にニューカレドニアが独立したとしても、独立後に別の大国との新たな支配・被支配関係に入らなければ経済的に存続できないことは明白で、独立派が何を期待しているのかおおいに疑問だ。