2018年に出版されて話題になった『ブルシット・ジョブ──クソどうでもいい仕事の理論』(日本語訳は2020年)を遅ればせながら読んでいるが、さすがに面白い。著者のグレーバー自身がすでに2020年に亡くなっており、こんな面白い本を書ける人が地球上から一人減ってしまったのは残念だ。ご存知の人も多いだろうが、ブルシット・ジョブというの は、実際には必要性も有用性もないのに、無闇矢鱈と増えてしまった職種で、仕事「A」を管理したりアシストするために仕事「A+」が生まれ、「A+」を管理したりアシストするために仕事「A++」が作られる、というように、いわばメタレベルの重層化によって増殖したたぐいの仕事であり、社会的に評価が高く報酬も良い場合も多いが、実際には単に無用・無益なだけでなく、やっている当人も無用・無益だと感じているという点がミソだ。大雑把にいえば、オフィスワークの大部分はこれに該当するだろう。昨今話題になっているAIの発展で消滅する仕事、というのはまさにこうしたブルシット・ジョブかも知れない。この本が書かれた時点ではまだ新型コロナウイルス危機は起きていなかったわけだが、危機を通じて、何が必要で大切な仕事であり、何がブルシット・ジョブかがいっそう明確になった印象がある。 かくいう筆者自身が自分の仕事をどう感じているか、は言わぬが花だろう。