チャールズ国王の戴冠式

投稿日: カテゴリー: アライグマ編集長の日々雑感

英国のチャールズ国王の戴冠式をBBCテレビで視聴した人の数は1400万人に達したそうだ。直接に関係のないフランスでもなんと900万人がテレビで戴冠式の実況中継を視聴したという。21世紀も最初の四半世紀が終わりに近づいているのに、なんとも時代錯誤な話とも言えるが、アナクロニズムは英国の真骨頂であり、他では味わえない魅力の源でもあるだけに、これは驚くに値しないのだろう。英国の作家ウィル・セルフ氏は仏ルモンド紙への寄稿で、フランス人である夫人が物珍しさから戴冠式をテレビで見たがるので、自分も仕方なくつきあうことになると予告した上で、世論調査によると英国民の45%が王政の廃止を望んでいる中で、戴冠式を一目見ようと群衆が殺到する状況を「認知的不協和 (cognitive dissonance)」だと辛辣に皮肉っている。王政に反対する共和主義者の抗議行動も展開されたが、国王や政府に逆らったからといって、投獄されたり、射殺されるわけではなく、そこらはロシアや中国と違って平和なものである。参加者も、昔のフランス人と違って、なにも国王を斬首しろと要求しているわけでないから、テレビ局が週末に視聴率を稼ぐのに恰好の馴れ合い的なスペクタクルが成立するのだろう。王を失って長いフランス人の羨望や嫉妬を掻き立てるという副次効果もあり、英国民には適度に楽しい憂さ晴らしになったのではないか、と想像する。