駐仏中国大使の発言をめぐる本音と建前

投稿日: カテゴリー: アライグマ編集長の日々雑感

駐仏中国大使がウクライナやバルト3国の主権国家としての地位を否認する発言を行い、物議を醸している。いわゆる戦狼外交路線の延長で出てきた暴言の類なのかも知れないが、さすがに中国の外務省は訂正発表を行って、これらの国々の主権を再確認した。ただし、大使の発言は中国の強硬な主流派の本音を反映しており、外務省の訂正のほうが単なる建前であり、外交辞令に過ぎないという印象は強い。ロシアとウクライナをめぐり中国が中立の立場から和平を仲介する、などというシナリオを本気にしていた人はまさかいないだろうが、今回の大使発言は、中国がロシアや北朝鮮やイランなどと組んで独裁・専制国家の連合による新たな世界秩序の確立を目指し、欧米の民主国家に挑戦していることを改めて認識させてくれた。すでにアフリカや中東の多くの国は中露の影響下に取り込まれており、欧米への反発を強めている。正義と悪、といった 二元論はとっくの昔に廃れたと思っていたのだが、意外にも21世紀の世界情勢はこうした単純な善悪二元論で効率よく理解できそうな様相を呈しているのが怖い。20年ほど前に当時のブッシュ米大統領が「悪の枢軸」という表現を持ち出した際には、その世界観の幼稚さに思わず苦笑したものだが、今や、意外に先見的だったのかしら、とすら思えてくる。ブッシュ大統領といえば生涯に本の一冊も読んだことがない、と揶揄され、米国的な反知性主義の典型だったが、その直観はあながち軽視できない鋭いものだったのだろうか。。。。 問題なのは正義は常に勝つ、とは限らないことだ。特に最近は負けがこんでいる気がする。