日仏関係にも複雑な歪みをもたらしたゴーン事件から4年近くを経て、ルノーと日産の関係が大きく見直されつつある。企業同士の力関係を部外者がコメントするのは場違いかも知れないが、ルノーの現在の苦しい立ち位置(巨額赤字を出して国の支援により救済、もっぱら低価格車ダチア頼みの販売実績、株式時価総額 では小人、フランスに次ぐ主要市場だったロシアからの撤退、などなど)を考慮すると、日産がより対等な立場を求めるのもわかる気がする。そもそもゴーンという特殊な人格や価値観や倫理観を持つ経営者を日産に送り込んでリストラを実施させたことの功罪をどのように評価すべきかは、単に両社だけでなく、日仏両国の国民にとっても今後に突き詰めて吟味すべき課題だろう。出身地のレバノンで楽しい余生を送っているゴーン被告だが、ルノーのNo.2でライバルでもあったタバレス氏がルノーを追放された後に、PSA次いでス テランティスで着々と実績を築いているのをどのように感じているのだろうか? ルノーのデメオCEOはことあるごとに、ゴーン時代の経営戦略の誤りを(名指しではないが、明らかにそうとわかる表現を用いて) 指摘し、それを矯正することが自分の役目であり、課題だと強調している。長かったゴーン時代を通じて、 ルノーとフランスの自動車産業が失ったものは大きいが、今から挽回できるのかどうか。もちろん国の後ろ盾があるので、ルノーという会社は潰れないだろうが、重いお荷物になるリスクはありそうだ。