移民問題と極右台頭

投稿日: カテゴリー: アライグマ編集長の日々雑感

スウェーデンに続いてイタリアでも総選挙で極右政党が鮮やかな勝利を飾った。極右の台頭を招いた一因は 移民問題の深刻化だ。移民をめぐる問題には常に様々な誤解や偏見、妄想や幻想がつきまとうので、フラットなレベルで検討することがなかなか難しいが、アフリカやアジアから、欧州とは全く異なる価値観、習慣、モラルや文化を持つ人々が欧州に押し寄せて、西欧現代社会の世界観や価値観と相容れない自己完結的な世界観や宗教的戒律を頑なに維持し、欧州の世俗的法律よりも宗教的な法律のほうが優越すると考え続けることが、多くの国で強い軋轢を招いているという現実的問題は、単なる善意や人権配慮では解決できない。一番手っ取り早い解決法はともかく移民をこれ以上は入れず、また、すでにいる移民の中の不穏分子を追い出すことだと考える普通の市民が増えたとしても全く不思議はない。もちろん極右台頭の影には、インフレによる購買力低下とかウクライナ危機に由来する先行きの不透明感もあり、社会不安が高まる中で、移民がスケープゴートにされている一面もある。しかし、かつての欧州内での人口移動と異なり、現在の移民問題には、西欧文明が異なる文明による強い挑戦を受けているという側面があることも確かな上に、多様性や自由や人権を重視する西欧文明には、こうした外部からの挑戦に抵抗するための免疫を自ら放棄してしまったという特殊性がある。極右勢力はこうした状況で一種のワクチンのような役割を担いつつあると考えることもできそうだ。多少の副反応は我慢せざるを得ないのかもしれない。