2022年8月23日 編集後記

投稿日: カテゴリー: アライグマ編集長の日々雑感

1ヵ月後の9月25日に予定されるイタリアの総選挙では、ファシストの流れをくむ極右政党「イタリアの同胞」が第一党に躍進して、メローニ党首が首相に任命される可能性が強い。同党首は8月10日に発表した外国メディア向けの動画で、イタリアの右派勢力はファシズムと数十年前に決別したと英仏西語で強調したが、フランスのメディアは同党首が19才だった1996年にフランスのテレビで「ムッソリーニは素晴らしい政治家」 と称賛していたことを報じている。「イタリアの同胞」所属の欧州議会議員の中には、ハイルヒトラーなどとナチス式敬礼を行う御仁もおり、何十年たってもファシズムの紐帯を断ち切れないイタリア政界の病根は深い。メローニ党首は少なくとも欧州懐疑色を薄める努力を見せているが、ハンガリーのオルバン首相やスペインの極右政党Voxと密接な関係を保っていることも指摘されており、どう転んでも、親欧州派の新政権 が発足することはない。ポーランドやハンガリーと違って、イタリアは欧州統合の創設国の一つであり、独仏に次ぐEUの大国でもあるだけに、この急激な右傾化は新たな悩みの種をもたらすことになりそうだ。ただし、南欧や東欧という重いお荷物を抱えて呻吟しつつ前進することが欧州統合に課された運命のようなものであり、広大な地域と多種多様な歴史・習慣・言語を持つ諸民族を、中国やロシアと違って、民主主義的な方法でまとめあげることができるかどうかという極めて刺激的な政治的実験だともいえよう。