国会が3日に可決した補正予算法案には、電子保険証(カルト・ビタル)への生体認証導入向けの最初の予算2000万ユーロが盛り込まれた。この予算項目は、保守野党「共和党」が修正案の形で提案したもので、極右RNの賛成も得て採択された。
共和党などは、保険証の不正使用の規模が大きいと主張し、その対策として、指紋等の生体データの登録と参照による本人確認の手段が伴う新型保険証への移行を求めていた。与党連合もその要求に応じた格好で、そのための予算が承認された。
2019年の上院報告書は、電子保険証の流通数が、実際の被保険者数よりも200万から700万も多いとする推計を示し、保険証不正使用の被害額を年間60億ユーロ以上と算定している。これに対して、健保公庫は2021年の報告書において、不正使用の被害額を2019年に15億ユーロと推計。この額は、2014年の8億6000万ユーロから大きく増えているが、健保公庫はその理由として、不正摘発の努力が強化され、より多くの不正が検出されるようになったことを挙げている。また、「幻の保険証」の数も、被保険者数5790万人に対して3200枚程度とする推計を示しており、上院と健保公庫の間で状況の認識にはかなりの開きがある。
医師会などは、生体認証導入の意義に懐疑的であり、費用対効果という点で正当化されない措置ではないかとする見方を示している。生体認証の導入に当たっては、発行段階での費用高(保険証1枚の費用は現在の4.4ユーロが15ユーロに)に加えて、患者を受け入れる医師などの側でも設備投資が必要になる(推計で6000万ユーロ)。切り替えが完了するまでの期間も20年間と長い。