2022年5月17日 編集後記

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フランスで2人目の女性首相が誕生した。ボルヌ労相が16日に新首相に指名された。日本ほどではないが、フランスは欧州内の比較で、女性の政界進出が消極的な国とみなされているだけに、これは歓迎すべき人事だろう。
ところで、女性首相には男性首相にない独自のセンスを期待する向きもあろうし、フィンランドやニュージーランドなどの女性首相を見ると、そのような見方もあながち間違いではないと感じるが、男女平等の観点からは、性別の違いによるセンスの違いなどを求めるのは、むしろ差別的ということにもなりかねないから、事態はちとややこしい(しかし、性別がもたらす相違を否定するならば、なぜ女性の進出にこだわるのか?)。
それはともかく、初代女性首相だったクレッソン(1991-92年)の二の舞いにならないことを祈る。あれは女性史の汚点というべきだろう。当時のミッテラン大統領というのは意地の悪いところがあったから、そんなに女性を抜擢しろというなら、やってみようじゃないか、ほらどうだい、と意図的にダメな前例を作ったのではないか。そんなふうに思いたくなる人選だった。
別に日本人に関して軽蔑的な発言を繰り返したから、というわけではないが(特に悪意があったわけではなく、一般のフランス人が抱く紋切り型をうっかり口にしただけだったと思う)、クレッソン首相に関して良い印象はない。
当時のフランスの政界に女性蔑視がなかったとはもちろん言えない。いや、後から出てきた数々の証言にかんがみても、おおいにはびこっていたに違いないし、クレッソン首相がそういう壁にぶつかったことも確かだろう。同じ失言や愚行が男性の場合と比べて10倍貶されたり、愚弄されたりということはあったかもしれない。しかし、それは失言や愚行がなかったことを意味しない。そして、クレッソン首相について思い出すことといえば、失言や愚行ばかりで、その程度が必要以上に拡大されて伝えられた可能性はあるが、馬鹿げた発言や行為であったこと自体は覆らない。ボルヌ新首相はより賢い人だとは思うが、女性の進出に障害となるような実績を残さないことを期待する。