ルノーがヴォーアンヴラン市(リヨン市東郊)の販売・整備店の閉鎖を決めたことが、地元の反発を招き、物議を醸している。ルノーの経営陣は4月15日の労使協議会で、2022年末に同店を閉鎖する方針を明らかにしたが、その理由として、労組に提示した文書で、単に収益性の問題をあげるだけでなく、近隣に「不正取引が行われる無法地帯」があり、事業にとって好ましくない上に、地域住民の世帯当たり所得が低く、全国平均を下回っているとも説明した。
これがメディアにより報じられ、地元の住民や政治家から非難を浴びたため、ルノーはこれらの文言を消去したが、社内でも批判が噴出している。
ヴォーアンヴランは、若者と警察の衝突や暴動などが何度も発生しており、いわゆる郊外の問題地区とみなされている。しかし、同店に勤務する労組CGTの組合員などからは「住民を貧乏人と罵るのはショッキングだ。ルノーのような大衆車メーカーが顧客を侮辱していいはずがない」という批判が出ている。他方で、「自分は襲撃を受けたことも、身の危険を感じたことも一切ない」とヴォーアンヴランの治安の悪さを否定し、経営陣が提示したイメージを批判する従業員の声も聞かれる。
ヴォーアンヴランのエレーヌ・ジョフロワ市長は、同市の住民に烙印を押すような行為は許しがたいと憤りをあらわにし、企業の本社誘致などを進めている中で、ルノーが関係者の努力を台無しにするようなことは看過できない、と反発。左派系の市議会議員からも、国が株主で、国からの補助金も受けているルノーのような企業が、特定の都市の住民を差別するようなことがあってよいのか、という抗議が寄せられている。ローヌ県の県庁もこの事態に深い憂慮を表明した。
なお、閉鎖される販売・整備店の105人の従業員は、リヨン近郊の他の事業拠点に配転となる。